共有名義不動産の「建て替え」と「取り壊し」でおさえておくべきポイント
共有名義不動産を建て替えたい、取り壊したいと考えたときに共有名義だからこそ気をつけるべきことがあります。
自分の意思だけで決められるのか、費用はどのように負担すればよいのかという疑問とともに建て替えや取り壊しを検討しているのに、共有者の同意を得られず困っているというケースもあります。
共有名義不動産の「建て替え、取り壊し」の際に気をつけるポイントと対処法を説明します。
1.共有名義の建物を「建て替え、取り壊し」する際に気を付けるポイント
1)共有者全員の同意が必要
2)住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾が必要
3)固定資産税、都市計画税が高くなる可能性を考慮する
4)「建て替え、取り壊し」の費用は持分に応じて決める
1.共有名義の建物を「建て替え、取り壊し」する際に気を付けるポイント
1)共有者全員の同意が必要
-共有名義の建物を「建て替え、取り壊し」するには共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産は複数人の所有者がいるため不動産に対して何かをするときには共有者の同意が必要です。
また過半数の同意でできること、単独でできることもあります。
共有名義の不動産に対しておこなう行為には「変更行為」「管理行為」「保存行為」の3つがあります。
共有物の変更行為とは、建物の売却や取り壊しなど共有物の形や性質に変更を加えることです。
建て替え、取り壊しは変更行為にあたるため共有名義の建物を建て替えたり取り壊すためには共有者全員の同意が必要になります。
共有者の同意を得ずに建て替え、取り壊しすると他共有者から損害賠償請求をされてしまう恐れがありますので注意しましょう。
-倒壊の危険性がある場合は単独でも「取り壊し」できる
建物の老朽化をそのままにしておくと倒壊や破損などの危険性が高まり、また建物が倒壊してしまうと、近隣住民にも被害を及ぼします。
建物の建て替え、取り壊しには共有者全員の同意が必要ですが、老朽化が進んで倒壊や破損などの危険性が高い場合は共有者全員の同意なく単独で取り壊しが可能です。
建物が老朽化して倒壊の危険性がある場合その危険な建物の取り壊しは「保存行為」にあたるからです。
しかし他の共有者に黙って取り壊しをおこなってしまうと、のちにトラブルになってしまうかもしれませんので老朽化によって建物の取り壊しを検討する場合も他の共有者に連絡、相談するとトラブルを少なくできるでしょう。
また、老朽化によって危険となった建物の取り壊しは単独でもできますが、その後に建て替えるなら共有者全員の同意が必要となりますので注意しましょう。
2)住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾が必要
住宅ローンの支払が終わっていれば共有者全員の同意を得れば建て替えや取り壊しができます。
しかし、住宅ローンが残っている場合は住宅ローンに対して抵当権が設定されているため借入をしている金融機関の承諾が必要です。
抵当権とは住宅ローンの支払いが滞ったときに、強制的に売却する権利です。
抵当権が設定されているのに、取り壊しをおこなうと抵当権を設定している金融機関の権利を奪うこととなり住宅ローン契約の違反となってしまいます。
そのため損害賠償請求をされる可能性もあるので、勝手に建て替えや取り壊しをすることはできません。
まずは残債を確認し金融機関に相談してみましょう。
ほとんどのケースでは、金融機関から抵当権を解除する条件として残債の一括返済を求められます。
なぜなら、建物を取り壊してしまうとローン返済を待ってもらえる「期限の利益」という権利を喪失するからです。
残債を現金で一括返済できる場合、問題ありませんが、一括返済ができなければ別の方法を金融機関と相談しなければいけません。
金融機関によっては一括返済でなく、分割返済を認めてもらえるかもしれませんので分割返済や無担保での借り入れが可能か、抵当権を他の不動産に付け替えてもらえるかなどを相談しましょう。
また別の金融機関を利用し、建て替えや取り壊し費用に加えて返済中の住宅ローンの借り換えが可能かも検討するとよいでしょう。
3)固定資産税、都市計画税が高くなる可能性を考慮する
-建物を取り壊すと固定資産税や都市計画税が高くなる恐れがある。
不動産には固定資産税や都市計画税がかかりますが人が住むための建物が建っている土地には「住宅用地特例」という減税措置が適用されています。
住宅用地特例は簡単に説明すると固定資産税を課税標準の1/6、都市計画税を1/3に軽減される制度です。
「住宅用地特例」には「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2種類があります。
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)の場合、固定資産税課税標準評価額は1/6に減額され都市計画税課税標準評価額は1/3に減額されます。
一般住宅用地(200㎡を超える部分)の場合、固定資産税課税標準評価額は1/3に減額され都市計画税課税標準評価額は2/3に減額されます。
例えば200㎡の住宅用地(小規模住宅用地)があり、固定資産税評価額3,000万円だったとします。
固定資産税と都市計画税は以下のように計算されます。
「固定資産税=3,000万円×1/6×1.4%」
「都市計画税=3,000万円×1/3×0.3%(都市計画税は最高で0.3%)」
住宅用地が200㎡を超えている住宅用地が300㎡あるとしたら、200㎡までは評価額1/6に減額し、200㎡を超える部分は評価額1/3に減額して固定資産税を計算します。
このように建物が建っている土地は減税措置が適用されていますが、建物を取り壊すとこの措置が適用されなくなります。
つまり、建物を取り壊したことで固定資産税が6倍になったということが起こるのです。
-課税額が決まる1月1日に合わせて取り壊しスケジュールを立てる
建物を取り壊すタイミングを工夫することで少しでも長く「住宅用地特例」を受けることができます。
固定資産税は1月1日に1年間の納税額が決まります。
年の途中で取り壊したからといって税を月割りにする、年度途中に固定資産税額が変わるなどはありません。
そのため1月1日に住宅用地であれば、その年度はそのまま住宅用地特例を受けられます。
しかし1月1日までに取り壊しが終わり更地になっている場合、住宅用地特例は受けられません。
例えば12月下旬に取り壊しをする予定だったとしたら、取り壊し日を延ばし1月1日は住宅をそのままにしておきその後1月2日に取り壊したとしても、その年度は住宅用地特例を受けた固定資産税を支払うことになります。
取り壊しを急ぐ理由がないようであれば1月1日を待ってから取り壊しをおこなった方がよい場合もあります。
4)「建て替え、取り壊し」の費用は持分に応じて決める
-共有名義の建物の「建て替え、取り壊し」の際の費用は誰が負担するのか
建て替えたり、取り壊したりする際の費用は一般的には持分割合に応じて費用を負担するケースが多いです。
例えば兄弟で共有している建物の取り壊し費用が300万円として持分割合は兄が2/3、弟が1/3の場合、兄の取り壊し費用負担額は200万円、弟の取り壊し費用負担額は100万円となります。
また共有不動産の持分の割合は取得するために負担した金額に応じて決まりますので建て替えのために負担した費用がそのまま持分割合になります。
例えば兄弟2人で所有する共有名義不動産の建て替えに、4,000万円かかったとします。
建て替えの際に兄が負担した費用は2,000万円、弟が負担した費用も2,000万円だった場合、建て替え後の持分割合は1/2ずつになります。
-持分割合と費用負担割合が異なると贈与税が課税される
建て替え費用の負担割合と持分割合が異なると、その差額分は贈与とみなされてしまいますので注意が必要です。
例えば兄弟で共有名義不動産を建て替えることになり、持分割合を1/2ずつにすることにしました。
ところが、建て替え費用2,000万円のうち1,500万円を兄が負担し、500万円を弟が負担しました。
持分割合を1/2ずつにするには、建て替え費用を1,000万円ずつ負担しなければいけませんが建て替え費用の負担割合は1/2ずつではありません。
弟が負担した費用は500万円なので、差額となる500万円が兄から弟への贈与とみなされてしまい贈与税が課税されてしまいます。
このように建て替え費用の負担割合を決める際には、持分の割合は取得するために負担した金額に応じて決まるという事に注意が必要です。
-建て替えにかかる費用の相場
建て替えにかかる費用の相場は建物の延床面積によって変わります。
建て替え費用の相場の目安は延床面積が90~110㎡で1,000万円台、延床面積が110~120㎡で2,000万円台、延床面積が120~130㎡で 3,000万円台です。
あくまでもシンプルな家を建てる際の目安として参考にしてみてください。
-取り壊しにかかる費用の相場
取り壊しにかかる費用の相場は建物の構造によって坪当たりの費用が異なり、立地や建物の状況、階層によっても変わってきます。
取り壊しの費用の目安としては木造が4~5万円/坪、軽量鉄骨造が6~7万円/坪、RC(鉄筋コンクリート)造が6~8万円/坪となります。
例えば木造(30坪)の建物を取り壊す際にかかる費用は5万円 × 30坪 = 150万円です。
平均的な一戸建て(30坪)の取り壊しにかかる費用は、およそ150万円といえるでしょう。
実際に建物を見てもらい、複数社から見積もりを取って正確な金額を把握しましょう。
2.共有者全員の同意を得られない場合の対処法
共有名義の建物の「建て替え、取り壊し」には共有者全員の同意を得ることが前提でした。
しかし、諸事情で共有者全員の同意を得られない場合はどのように対処すればよいのでしょうか?
1)共有者の持分を買い取り「建て替え、取り壊し」をする
共有者の同意を得ずに建て替え、取り壊しをするには共有名義の不動産から単独名義の不動産にすることで解決します。
単独名義にするには共有者全員の持分を買い取る必要があります。
共有者の持分をすべて買い取り、自分だけの単独名義不動産にすることを「全面的価格賠償」といいます。
単独名義にすることができれば自由に建て替え、取り壊しをできますが、全面的価格賠償には共有者全員の持分を買い取れるだけの資金力が必要となりますので注意が必要です。
2)今後のトラブルを避けるため共有状態を解消する
建て替え、取り壊しについて共有者同士で揉めるのは避けたいということであれば、共有状態を解消することをおすすめします。
共有状態を解消する方法は「現物分割」、「換価分割」、「裁判により分割」の3つの方法が主に考えられます。
-現物分割する
単独名義
現物分割とは物理的に分割する方法です。
建物が建っているなら、建物を分割することはできませんので取り壊したあとに土地を現物分割することになります。
ひとつの土地を共有名義人の数に分けて登記することを分筆といいます。
分筆すると共有ではなくなるのでその土地を各々が自由に扱えます。
ただし、分筆する際には分けた土地それぞれが建物を建てるのに支障が出ないよう気をつけなければいけません。
土地の分け方によって道路に面していなかったり、分けることで土地が狭くなり過ぎたりすると、土地の面積で考える評価額よりも価値が下がってしまうからです。
-換価分割する
換価分割とは共有名義不動産全体を売却し、売却で得た利益を持分割合に応じて分割する方法です。
売却で得た利益を持分に応じて分割するということは、分筆のようにどのような分け方をするかで揉めることなく公平性を保つことができます。
-裁判により分割する
他の共有者との話し合いで解決できず共有者との協議が破談することがあります。
この場合は裁判により分割することができこれを「共有物分割訴訟」といいます。
共有物分割訴訟になると民法の定めに従い分割します。
共有物分割訴訟では原則として現物分割になりますが建物の場合は分割ができないので、競売にかけてその代金を分割する方法や価格賠償という方法がとられたりします。
「共有物分割訴訟」についてはこちらのページを参考にしてみてください。
共有物分割請求訴訟とは?
共有名義の不動産を建て替えたり取り壊したりする際には、まずは共有者全員の同意を得なければいけません。
住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾も必要となります。
建て替えや取り壊しにかかった費用は持分に応じて決める必要もあり、話しがスムーズに進まないこともあるでしょう。
その状況を解決する対処法などをいくつか説明しましたがあまり知識のない方が簡単に解決できる事柄ではないと思ったはずです。
共有名義の建物の老朽化でお悩みであれば経験豊富でノウハウと実績がある信頼できる専門業者、不動産業者にご相談してみましょう。
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